BS 活動報告 2020.06.19
私たちBody Synergy には研究チームがあります。これまで、いろいろなコンセプトや課題をあらゆる手段を使いながら「身体化」することで、からだを通して考え、気づき、人との繋がりを深める方法を模索してきました。
例えば、”Who Am I?” 『私は誰なのか』というテーマがあったら、それを頭で考え、いろいろな言葉を使って対話をすることが可能です。しかし、Body Synergyでは、そのテーマについて時には呼吸の仕方を通して探ったり、背骨の状態に着目して探ったり、絵を描いて探ったり、いろいろな角度から、からだを使ってそのテーマを探っていきます。そうすることで、からだの奥深くに眠っている感覚や、からだから湧き上がってくる感情に気づかされ、頭で考えただけでは到底思いつくことがなかったであろう「私」の姿を再発見します。このようなプロセスを通ることでものごとにとても奥行きのある深い理解がうまれ、その身体的体験を言葉にして他者とシェアすることで、生き方について考えるのが私たちBody Synergyのやり方です。
昨年夏の茅野市民館での2日間の Body Synergyのプロジェクト以来、しばらく研究チームの活動はお休みしていました。しかし、新型コロナウィルスで突然全てが止まってしまった3月、また研究チームでいろいろと話し合うことが始まり、4月からオンラインでの研究が始まりました。はたして、オンラインでのBody Synergyは可能なのか?Body Synergyはグループで一緒に動いて、触れ合い、言葉でからだでも対話をする時間なので、アフターコロナとなった今も、他者を触れ合ってはならないこの「新しい日常」をどう生きるかはとても重要な問題だと考えています。あらゆることがオンラインに切り替わったこれから、私たちは「身体」をどう捉えながら生活していけばよいのでしょう。Body Synergy研究チームの新しい試みが始まりました。
5月には表現アートセラピーを学んできたメンバーが『在りたい自分・在りのままの自分・在ってはならない自分』をテーマに、2時間のワークショップをやってくれました。自分の自己概念がどのように形成されているのかを探るワークです。
表現アートセラピーの第一人者であるナタリー・ロジャースは、絵、ドラマ、ムーヴメント、粘土、音、言語などあらゆる表現媒体を組み合わせたそうです。そして、次のようなプロセスでセラピーを行いました。
1、 クライアントの問題や話を聞く。
2、 話した内容を言語以外の表現媒体で表してみる。
3、 そこで出てきたものを、さらに他の表現媒体で表してみる。
4、 気づいたことを言語化する。
この、自分を探るプロセスを言葉だけではなく他の媒体で探る、というのはBody Synergyでもとても大切にしている要素ですし、また私たちもワークの後に必ずからだで得た体験や気づきを言語化し、他の参加者とシェアすることで、さらに思考のプロセスを深めます。ロジャース氏の言うように、絵を描いたり、踊ったり、ものを創る行為には自分が投影されるので、頭だけ、言語だけで自分を探るよりもより多角的に自分について考えることができるからです。
今回のワークでは、絵を書くこと、そしてそこに言葉を書いて切り取った小さな紙をその絵に貼り付けること、そして、そのプロセスを経た後に在りたい自分・在りのままの自分・在ってはならない自分それぞれを動きでもやってみました。絵画、言葉、動きという3つの媒体で探ることで、ただ座って自己概念を探るよりもより具体的な言葉や感覚が出てきたように思います。その後で、ワーク中に発見したこと、またこういったワーク自体の意味や意義などについて1時間半ほどたっぷりと意見交換をしました。
画像はこの日参加したメンバーが書いた絵です。同じテーマ、手法でも、表し方はそれぞれ全く違うことがはっきりと見えます。こうして、自分自身の頭の中や、からだの奥底に眠っているものを視覚化することで、とてもたくさんの発見が在りますし、また私たちの生きる世の中が「多様性」で溢れている、と言われる理由も目ではっきりと見ることができる、大変興味深いワークでした。
今回のパンデミックを経て、より一層私たちの生活の中で「身体性」について真剣に考えなければならない時代がこれからやってきます。たくさんのことがリモートで行われるようになるこれから、私たちの意識の中からからだが消えていくからです。しかし、私たちの肉体はただの道具ではなく、私たち自身なので、身体性を失っていくことは、自分自身を失っていくこと、そして他者や世界とのつながりを失っていくことに直接的に関係してきます。そんな中、Body Synergyのような活動や、ものの考え方が、今まで以上に「自分」という存在を把握し、他者や社会と深いつながりを持ち続ける大きなヒントになると考えています。
Body Synergyとオンラインの世界、とても対極の位置にあるものではありますが、どんな領域においても実践可能であることを目指すBody Synergy。これから私たち研究チームのまた新たな挑戦が始まります。今後の動きはまたブログでその都度お知らせしてまいります。