BS 活動報告 2018.06.17
6月17日、今年度第3回目となるBody Synergyの活動がありました。今回は、昨年BSとは別のコンテンポラリーダンスのプロジェクトでご一緒させていただいた、内野徹さんと諸岡智子さんにワークショップをファシリテートしていただきました。お二人とはすぐに意気投合し、今年度からBS研究チームにも加わっていただいており、毎回、不思議な親しみのある新しい風を吹かせてくれています。お二人は普段「まなびとくらし」という活動をされており、『感性と表現、五感と共感、身体と心をめぐるワークショップやプログラムを通じて、子どもたちの「生きていく力」を育む』(HP引用)ことを目的とした様々な活動を行っています。BSの活動で大切にしていることと重なる部分をたくさん感じられます。お二人とは、出会った時からなにか”おなじ香り”がするなぁと思っていたので、今回、普段やられているワークをBSのメンバーにもシェアしていただけるという機会に、私たちもドキドキワクワク集まりました。
まなびとくらし HP →→→ https://manabitokurashi.amebaownd.com/
以下、内野さんによるまとめです。↓↓↓
今回のテーマは音。普段の生活の中で、耳をすまして聞いてみることってありますか?
私たちは普段、多くの情報収集を視覚に頼っています。視覚という感覚は、見る人が見ている対象の外側に位置づけられる特徴を持っています。そして視覚による情報は一度に一方向からしか自分の方に向かってきません。つまり、約 120°といわれる視野角の限界ゆえに広範囲の風景を見るためには、眼や頭を四方へ動かさなければ、その情報をえることはできません。私たちはこの切り取ったいくつかの視野情報を頭の中でつなぎ合わせて、自分の身体を中心とした空間を視覚的に認識しているのです。 これに対して聴覚は、つまり音は聞く人の内部に注ぎ込まれます。私たちが聞く時、音は同時にそして瞬時に、 あらゆる方向から自分の方へ集まってきます。 その時「私」は世界の中心にいるのです。
視覚のなかに浸ることはできませんが、聞くことのなかに、音のなかに浸ることはできます。その時、世界は私を取りかこみ、私は感覚の存在の中心点にいるのです! 今回は聞く身体をつくることによって「世界は自分が感じるようにしかない」ということを再発見できればと思います。感覚スイッチを切り替えると身体は、心は、どんな風に変わるでしょうか。自分自身のささやかな変化を丁寧に観察する時間になるといいなーと思います。
まずはメンバーで輪になって座ります。今さらながらの今の自分を伝える自己紹介の中では、今朝起きた時に最初に聞いた音を皆んなに伝えてもらいました。次に3人グループになって(1)好きな音(2)悲しく感じる音(3)未来まで保存しておきたい音の3つについて10分くらい会話をしてもらいました。これらは身体に残る音の記憶を呼び起こすプラクティス。メンバーからは「それぞれの音にまつわるとてもパーソナルなストーリーがあって、ワクワクしました」「音は感情を思い起こさせるなと思った。高揚。悲愴。郷愁などなど」「自分の経験と記憶を音を通して辿るという時間。音から辿るということが新鮮で、面白かった」などの感想がありました。
次に「音ゲー」の時間。1つ目は再び丸くなって座り、A4の紙を音を立てずに隣の人に渡していきます。これが本当に難しい。作業に集中し、もらい方・渡し方を工夫すればするほど、なんだか笑ってしまう感じでしたが、今回のワークショップで最も聴覚にフォーカスした時間だったかも知れません。
2つ目はサウンドトレース。長くなるので詳細は省略しますが「今までに使ったことのない体のチャンネルを使った感覚。最初は一人だけ、そのうち二人目が動き出した時、使う神経は2倍ではなく4倍くらいになった」「音で距離を感じていることを再認識した」などの感想がありました。
最後のワークをする前の身体の準備として、「静寂を聞く」時間。1回目は床に寝転んで耳を澄ます。2回目は身体を起こして耳を澄ます。「いかに日常は音が存在しているかということを思い知る時間」「一つの音を聞こうとすると他の音を姿を消したり、聞こうとする音が他の音よりも大きく聞こえてきたりする。音量というのは絶対だと思っていたけれど、とても相対的であることに驚き興奮しちゃう」などなどの感想がでました。
最後のワークは、「音を探す」時間。3−4人のグループで外に出て、近くにある好きな音を見つけてくる。そしてその音をそれぞれスケッチして帰ってくる。参加者の感想も色々なものが出てきました。「毎日当たり前のように聞こえている車の音は、意識して聞いている体勢の時には、大音量で耳に入ってくる。その大きな音にかき消されている些細な音に耳を向けると、それはとても懐かしい音はいくつもあった。」また、このワークでの経験を職場で直接活用できそうな参加者もいたようです。「職場(保育士)でお散歩に行くことが出てきたら、子供が道中足を止めた時に、”早く目的地に着きたいから急かす行動”になる前に(あ、何か気になるものがあったのか、何を感じているのー?)と一緒になって見たり聴いたりできる視点を得られたかなと思います」他には、「自分の声は自分が聞いているのと、他人が聞いているのは違うと言われるけれど、同じ音楽を聞いていても人によって聞こえている音楽も違うのではないか?と考えています。感じた音を描いてみることは別の視点でモノを捉える面白い時間でした。同じグループでの捉え方の違いや、別の人の絵から自分がイメージすることの違いが面白かった」「聴覚の極私的な点や共有し難さ、空間性など言われてみて腑に落ちる部分、発見があり興味深いワークでした」などの感想が出ました。